出版大手3社の電子タグ採用検討に見るフリーペーパーの未来


集英社小学館講談社の出版大手3社と大日本印刷ブックオフ株を買ったニュースはまだ記憶に新しいと思います。あのとき、「何をする気だ?」という憶測が飛び交いました。そして、おととい、回答のうちひとつが発表されました。
以下、asahi.comの記事を要約します。

万引き対策に電子タグ構想 asahi.com
 講談社集英社小学館の出版大手3社と大日本印刷グループ(大日本印刷図書館流通センター丸善)によるブックオフ株取得で、出版社側とブックオフの間で「万引き本の買い取り防止対策」が焦点の一つに浮上している。・・・
 これまで、発売されたばかりの話題の本がその日のうちにブックオフの棚に並ぶことがあり、「万引きされた商品ではないか」と出版社・書店側は疑いの目を向けてきた。・・・
 この問題で、大きな役割を果たしそうなのが大日本印刷が開発中の電子タグだ。書籍1冊ずつにつければ、書店のレジを通ったか否かがわかるようになる。

つまり、出版物にレジを通過したかどうか記憶できる電子タグを添付し、レジを通過していない商品がブックオフに持ち込まれた場合は買取をしない、というもの。個人的には、非常に有効なよい対策だと感じました。

ここで、「電子タグ」について解説しておきましょう。ICタグとも呼ばれます。身近なところでは、PASMOsuicaといったIC乗車券やtaspoがそれにあたります。小さな電子チップに情報を埋め込み、読み取り機から電波でそれを読み込むものです。今回の事例では、書店レジで電子タグに情報を埋め込み、ブックオフのレジでそれを読み取り、という流れになりますね。
この技術のすばらしい点は、必ずしも接触させる必要がないこと、非常に小さいこと、そして安価なことです。海外では、商品の外箱の紙繊維に紛れ込ませてカゴごと自動でレジ、清算を行なう仕組みもあります。つまり、そのくらい小さく、商品価格に反映されるほど高くもない、ということです。

私は今回のニュースを読んで、フリーペーパーに適用できないかなぁ、と考えました。
2〜3年前まではフリーペーパーは広告媒体として花形で、4マスが衰えていく中、代理店の救世主と言われかねない勢いでした。が、近頃はやはり衰えていっているようです。その衰退の構造は4マスとまったく同じで、読者の顔が見えず、絨毯爆撃的な広告投下にしかならないことが広告主には不満なのです。
部数の問題もあります。新聞・雑誌であればABC協会、テレビ・ラジオはビデオリサーチ社が(かなり怪しいとは言われますが)その部数・視聴取率を確認しています。
ですが、フリーペーパーは発行部数はわかっても、読んでもらった部数をつかむことが難しいのです。ラックから消えた数を数えることだけでは、不確定ですよね。

そこで、この電子タグを雑誌に埋め込めないかと考えました。
たとえば、駅で配布しているものなら、改札を通過する際に、店舗内での配布であれば店舗の出入り口で、フリーペーパーの出入りを検知、カウントするわけです。そうすれば、「持ち出された数」を確実にカウントできます。また、クーポン誌であれば切り取る必要がなくなります。フリーペーパー自体を店舗のレジで読み取り、クーポンを使うことができるでしょう。

ここから先は空想的ですが、ライフログと結びつけることで、さらに詳細にデータを取得できます。いまの日本では、定期券やケータイなど、個人情報を持っていて、かつ、電子タグの埋め込みが可能(もしくはすでにされている)機器をほぼ一人ひとつずつ所持しています。これらと組み合わせることで、どこのだれがどのフリーペーパーを持ち出したか、が明確になります。
もちろん、倫理面の問題が大きいですので、まだまだ空想の域を出ませんが、個人情報を電子タグで提供することに明確な利益を感じることができれば、可能なのではないでしょうか。
たとえば、マクドナルドの「トクするクーポンアプリ」はアプリをダウンロードする際に個人情報を入力、以後レジで使うたびに利用者の属性と商品、時間が結び付けられます。マクドナルド社はそれをマーケティングデータとして活用するかわりに、通常のクーポン利用者よりも10円安く商品を提供しています。

個人情報を提供することのメリットは、精神衛生や安全性とのトレードオフです。このバランスをとるのはテクノロジーの力です。より強固なセキュリティ、属人的でないデータ管理が必要になります。
広告主が最小投資で最大効果を求め続ける限り、個人情報の取得は重要になってきます。上手な共生方法がみつかるといいのですが…。

ライフログについては、後々解説いたします)